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バレンタインデー特集~なぜ「ラフマニノフの2番」は恋愛の曲となったのでしょうか?

ブニアティシヴィリ

「恋愛の曲」として真っ先に思い浮かぶのは、ロシアの作曲家で名ピアニストでもあったラフマニノフ(1873~1943)のピアノ協奏曲第2番です。

20世紀の最初の年、1901年に作曲され、同年にラフマニノフ自身のピアノにより初演されると大評判を呼びました。この作品の成功により、ラフマニノフの作曲家としての地位も確固たるものになりました。

ちょうど同じ頃、1877年にエジソンが発明した蓄音器が一般に普及しはじめ、1925年にマイクロフォンによる録音が開発されると、ラフマニノフはコンポーザー=ピアニストとして数多くの録音を行うようになります。ピアノ協奏曲第2番も1929年に自ら録音し、これは戦前非常に有名なレコードとなり、現在もCDで聴きつがれています。

 

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がクラシック・ファンだけでなく、一般に広く知られるようになったのはラフマニノフ没後、1945年のデヴィッド・リーン監督のイギリス映画『逢びき』(DVDは現在廃盤)によってです。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の切なく甘美な旋律が、中年の淡い不倫の恋を描いたメロドラマのムードをいやが上にも高め、多くの映画好きを魅了しました。この映画は1946年のカンヌ国際映画祭のグランプリと批評家賞を受賞。日本でも1948年に公開され、人気を呼びました。このときに「ラフマニノフの2番」=「恋愛の曲」というイメージが結びついたようです。

 

【参考映像】映画『逢びき』オリジナル・トレーラー

その後も、この「ラフマニノフの2番」の人気は衰えることなく、最近でも漫画「のだめカンタービレ」の重要な場面の音楽として使用されましたし、フィギュアスケートの浅田真央も2013-2014シーズンのフリーでこの曲の第1楽章を用いていたことは記憶に新しいところです。

おすすめCD

(1)ブニアティシヴィリの演奏 2016年録音

数多くのすぐれた音楽家を輩出してきた国、ジョージア(グルジア)から彗星のように登場した、女優のように美しいカティア・ブニアティシヴィリ。彼女が写ったジャケット写真は明らかに映画『逢びき』をイメージしたもの。この名曲と名画の深い結びつきを改めて実感させられました。

(2)ワイセンベルクの演奏 1972年録音

ブルガリア出身のテクニシャン、ワイセンベルクによるスタイリッシュな演奏。大指揮者カラヤンと組んだ演奏で、テンポを落とした第2楽章の演奏は殊に有名です。

【参考映像】
ワイセンベルクのラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番~第3楽章より
(CDとは別の機会の演奏です)

(3)河村尚子の演奏 2013年録音

1981年生まれの若手実力派、河村尚子の最新録音で、レコード芸術誌特選盤や「CD屋さんが選ぶ『クラシックCDアワード 2014』」国内アーティスト部門で第1位に輝くなど、高く評価されました。透明感と力強さが両立した新時代のラフマニノフ演奏です。

【参考映像】
河村尚子のラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番~第1楽章
(CDとは別の機会の演奏です)

もう一つの「ラフマニノフの2番」~交響曲第2番

ラフマニノフといえば、ずっとピアノ曲の作曲家というイメージがついて回っていました。彼は楽器編成にピアノを含まない交響曲も3曲残していたのですが、クラシック・ファン以外に知られることはありませんでした。
ところが、1994年フジテレビのドラマ『妹よ』(DVDは現在廃盤)の中で、唐沢寿明が演じる高木雅史の愛好する曲として交響曲第2番の第3楽章が流れ、一躍この甘美な旋律をもつ作品が広く知られることとなりました。このテレビドラマが平均視聴率24.6%の超人気ドラマだったからです。当時はインターネットが普及する前の時代で、翌日から「ラフマニノフの2番」の問い合わせがレコード店に殺到する事態となりました。筆者自身、レコード店の店員としてドラマ放映の翌日朝から「ラフマニノフの2番」のCDを下さい、という問い合わせを受け、ドラマを見ていなかったため交響曲第2番なのかピアノ協奏曲第2番なのかわからず、立ち往生した苦い思い出があります。

【参考映像】
山田和樹指揮のラフマニノフ:交響曲第2番~第3楽章
モスクワ市交響楽団 2013年収録(後述のCDとは別の機会の演奏です)

ピアノ協奏曲第2番といい、交響曲第2番といい、映画やテレビで広く人気を集めることになったことを考えると、ラフマニノフの音楽自体が親しみやすく、ドラマティックであり、具体的なイメージを喚起するものである、ということが言えそうです。

おすすめCD

(1)ラトル指揮 ロンドン交響楽団 2019年ライヴ録音
現代最高の指揮者、サイモン・ラトルによる最新録音です。ラトルはこの曲を若いころから手掛けており、1984年にはロサンゼルス・フィルと録音していました。ロンドン交響楽団も、プレヴィン盤やゲルギエフ盤など、この作品に名盤を残してきており、両者の熟成した解釈による新たな名演に期待が高まります。

(2)デュトワ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1991年録音
ラフマニノフがピアニストとしてしばしば共演したフィラデルフィア管弦楽団を、スイスの名指揮者で、長くNHK交響楽団を指揮していることで日本とも関係の深いデュトワが振った録音。交響曲第2番を含む3曲の交響曲と、交響詩2曲、合唱交響曲『鐘』なども入った、お得な4枚組廉価ボックスです。

(3)プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団 1993年録音
実にスマートに磨かれた表現が全編に行き渡っています。新しい世代の演奏家を思わせる透明度の高さは、従来のロシア人指揮者やオーケストラの演奏とは一線を画したもの。知的な構築性を聴かせてくれます。新しい時代を想起させるラフマニノフがここに描かれています。

(4)山田和樹指揮 仙台フィル 2013年録音
小澤征爾、佐渡裕に続く、世界を舞台に活躍する日本の若きマエストロ、山田和樹の最新録音です。山田和樹はこの作品を得意とし、上記参考映像のように日本だけでなく世界各地でも演奏しています。

カテゴリ : Classical

掲載: 2017年02月09日 00:00

更新: 2023年03月30日 12:00