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インタビュー

WRENCH 『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION/LIVE & REMIXXX』



彼ららしい斬新な手法で、自身のライヴ音源を再構築した問題作が登場! WRENCHのいまのモードをここで堪能しよう!

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WRENCHの新作『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION/LIVE & REMIXXX』が凄まじい。昨年12月に行われたライヴ音源とリミックス曲から成る2枚組で、彼らのライヴで体験できる、血が沸騰して逆流し、〈ウォーッ!!!〉と叫び出したくなるような、圧倒的な昂揚感を味わうことができる。また、本作はただのライヴ&リミックスとは違う。ライヴ音源を元にバンドみずからが手の込んだエディットを施し、さらに同じライヴ音源をOORUTAICHI、DJ BAKU、DJ NOBU、MERZBOWといった先鋭音楽家たちがリミックスするという、いわばWRENCHのライヴを素材にした新しい解釈集ともいうべき作品なのだ。

「当日のライヴはすごく出来が良かったから出したかったんだけど、どうせならガラリと視点を変えたものにしたかった。単なる記録としてのライヴ盤というより、ひとつの作品として作ろうと」(SHIGE、ヴォーカル/シンセサイザー)。

「ライヴとスタジオ盤の融合的なものができればと。信頼できる人たちにリミックスしてもらったり、録った音源を持ち帰ってあれこれいじってみたり。PCを使ってパートを入れ替えたりループしたり逆回転してみたり、一種のコラージュ作品として作ってみた曲もあります」(坂元東、ギター)。

パワフルでエネルギッシュなステージの熱気はまったく損なわれていないが、しかし良く聴けば、ライヴではあり得ないトリッキーなエディットやエフェクトが施され、聴き込めば聴き込むほど発見がある。

「カットアップ式に歌詞を入れ替えてみたり。現場でもサンプラーを使ってるんだけど、自分の言葉でありながらまったく違う感覚で演れる。ライヴのたびに毎回同じ歌詞を歌うっていうルーティンに飽き飽きしてたから、ここ3年ぐらいはそういう指向が強くなってきていて、言葉の造型をその場でやるのがおもしろくなってる。それを反映してますね」(SHIGE)。

興味深いのは、ライヴ音源とリミックスが同居していても、ひとつの強固な統一感があること。リミキサーたちは新たな世界を提示するというより、すでにバンドのなかにある因子を拡大しているという印象だ。それだけいまのWRENCHが並のバンドではあり得ないほどの広大で多種多彩な可能性や世界観を内包しているということだ。

「俺もそう思いますね。ここ最近の僕らの世界観を的確に反映した作品になってると思います」(坂元)。

そんな彼らの世界は結成20年を迎えようかといういまも拡大し続けている。オリジナル・アルバムのリリースもそろそろ期待したい。それまで本作を聴きながらじっくり待とう。


▼リミックス参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、OORUTAICHIの2011年作『Cosmic Coco, Singing for a Billion Imu's Hearty Pi』(Out One)、DJ BAKU HYBRID DHARMA BANDの2010年作『D.E.F』(POPGROUP)、DJ NOBUの2010年のミックスCD『ON』(ミュージック・マイン)、MERZBOWの2011年作『Camouflage』(Essence)

▼WRENCHの2008年のコラボ・アルバム『drub』(cutting edge)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年11月01日 18:00

更新: 2011年11月01日 18:00

ソース: bounce 337号(2011年10月25日発行号)

インタビュー・文/小野島 大