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インタビュー

クリープハイプ 『吹き零れる程のI、哀、愛』

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メジャーデビュー盤となった前作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』から1年3ヶ月。あれからまだ1年3ヶ月しか経ってないのか、と思う。それほど彼らは前作以降の歩みを濃密なものにしてきた。そこに冠されているとおり、まさに『吹き零れる程のI、哀、愛』が鳴り響く2ndアルバムが完成した―。



このアルバムができて、自分はやっと音楽と肩を並べることができた



1曲目に据えられた楽曲のタイトルは、“ラブホテル”。思わず、ニヤリとする。誰よりもいびつで、生々しく、忘れがたい歌を希求し、それを創造してみせるソングライター、尾崎世界観らしい、挨拶代わりの1曲。その曲を聴く。<夏のせい>という魔法の言葉をエクスキューズに、なまぬるい心と身体を重ねようとする男女の悲哀が、切迫したユーモアをもって描かれている。そんな、いくばくかの背徳感さえ覚える歌が、ちょっと信じられないくらい光量の強いポップサウンドをまとって解き放たれている。鮮やかに想像できる、この曲に触れるリスナーの誰しもが、忘れがたいカタルシスを覚えるだろう。メジャーデビュー盤となった前作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』から1年3ヶ月。あれからまだ1年3ヶ月しか経ってないのか、と思う。それほど彼らは前作以降の歩みを濃密なものにしてきた。そこに冠されているとおり、まさに『吹き零れる程のI、哀、愛』が鳴り響く2ndアルバムが完成した

尾崎世界観(以下同)「結成から10年以上、メジャーデビューするまで長い紆余曲折があって、『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビューしてからは、ものすごいスピードでいろんな経験をして。なんか、このアルバムが完成してやっとバンドの第一期が終わったなって思うんです。それくらい満足のいくアルバムができましたね。毎月のようにレコーディングしながら、メンバーと自分たちがやれることとやれないことを見極めて、自信のある曲を作っていって。演奏もどんどんよくなっていったし、ここにきて<バンドをやってるな>って強く実感できた。『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』は<クリープハイプってなんだろう?>って悩んで、苦しい思いをしながら作って、完成してからしばらくして<いいアルバムができたな>って思えたんですけど、今作は完成と同時に揺るぎない手応えと喜びがありました」

バンド史上初のシングルにして、<音楽をやめるそのとき>の夢想を、歌姫との別れのラブソングとして描いた“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”。その“おやすみ泣き声~”がオリコンチャート7位を記録したという事実と、バンドが売れたことを嘆く女性の物語を相対化し、どこまでもヒリヒリとした感触をたたえた最高にキャッチーな楽曲に昇華した“社会の窓”。資生堂アネッサのCMソングであり、女性目線の濃厚なラブソングに耳にこびりつくようなサビをつけ、お茶の間に忘れがたき旋律を侵入させた“憂、燦々”(CM視点で捉えるとに変換できる)。前作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』以降、リードシングルとしてリリースしたこの3曲の存在は、本作を語るうえでとてつもなく大きい。

「実際に曲を作った時系列でいうと、“おやすみ泣き声、さよなら歌”は1枚目のシングルにふさわしい曲を書く。“憂、燦々”はCMになんとか応えたいという思いで作った。“社会の窓”はこのシングルの流れをどう面白く壊せるかがテーマでした。いままでは自分のなかで曲が出てくるのを待つことが多かったんですけど、シングル3曲以降は、自分から曲を引きずり出せるようになったんです。だからこそ、アルバム曲も<いま、こういうのがほしいんだけどな>という曲をジャストのタイミングで書くことができたんですよね」



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“ラブホテル”を皮切りに、音楽を使い捨てする存在に向けて唾棄し、不敵な速さで疾走するロックンロール“あ”、“おやすみ泣き声、さよなら歌”、“憂、燦々”という強烈な求心力を誇る頭4曲でリスナーの耳を鷲掴みにする。そこから、音楽的な奥行きが増した多彩なアレンジメントとバンアンサンブルの充実を示しながら、尾崎世界観というソングライターの核心がディープに刻まれたラストを飾るスローナンバー“傷つける”へ向かっていく。何度聴いても、紛うことなき傑作であると断言できる。『吹き零れる程のI、哀、愛』というタイトルに込めた思いを語る尾崎の言葉で、本稿を閉じることにする。

「火にかけた鍋から何かが吹き零れるみたいに、音楽を作ってるときに<自分はこんなこと思ってたんだ>って気づくんです。あとは、<この感情をなんとかしなきゃ!>って手を伸ばすような感覚。僕が音楽を作る感覚のすべてをこのタイトルで表すことができるなって。このアルバムができて、自分はやっと音楽と肩を並べることができた。そんなことを思いました」



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■Album……『吹き零れる程のI、哀、愛』 7/24 on sale!!

■SONG LIST
01.ラブホテル
02.あ
03.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
04.憂、燦々(※資生堂「アネッサ」2013CMソング)
05.マルコ
06.女の子
07.社会の窓
08.NE-TAXI
09.かえるの唄 
10.さっきはごめんね、ありがとう
11.シーン33「ある個室」
12.傷つける 

【初回盤ボーナストラック】
・自分の事ばかりで情けなくなるよ

 

■Live…

10/11(金)横浜CLUB LIZARD
10/14(月)札幌PENNEY LANE 24
10/17(木)京都磔磔
10/19(土)高松DIME
10/24(木)岡山CRAZY MAMA KINGDOM
10/26(土)熊本DRUM Be-9 V2
10/27(日)福岡DRUM LOGOS
11/9(土)長野CLUB JUNK BOX
11/10(日)金沢EIGHT HALL
11/16(土)仙台CLUB JUNK BOX
11/17(日)盛岡Club Change WAVE
11/22(金)名古屋Zepp Nagoya
11/24(日)大阪Zepp Namba
12/4(水)東京Zepp Diver City

※詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

■Profile……クリープハイプ

2001年、クリープハイプを結成。3 ピースバンドとして活動を開始する。2005年、下北沢を中心にライブ活動を活発化。ライブを観たいろんな人から「世界観がいいね」と言われることに疑問を感じ自ら尾崎世界観と名乗るようになる。2008年9 月、メンバーが脱退し、尾崎世界観の一人ユニットとなる。2009年11月に小川 幸慈(Gt.) 長谷川カオナシ(Ba.) 小泉 拓(Dr.)を正式メンバーに迎え、本格的に活動をスタート。2012年4月 メジャーデビュー。


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記事内容:TOWER+ 2013/7/10号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2013年07月09日 18:00

ソース: 2013/7/10

TEXT:三宅正一(ONBU)