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インタビュー

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10年目の月は、クリアな美しい光を放つ

『better than anything』のリリースから数えると、2013年でnoonはデビュー10周年になる。きっと記念となる作品を作ってくれるだろうな、とボンヤリ考えていたところ、ブルーノートの新時代を担う男となったホセ・ジェイムズがプロデュースを手がける『Full Moon』なる豪華な1枚が届いて驚いた。シンガーがシンガーをプロデュースするとは面白い試みだし、彼女が10年目の新しい扉を開けるためにこの上ないパートナーになるはずと容易に予想できたものだ。両者の出会いは、この3月にジャカルタで行われたジャズ・フェスの場。ふたりはすぐに意気投合したそうだが、ジェイムズがいままで会ったことのないタイプで、ある意味ショッキングだったとnoonは話す。

「シンプルなものが好きで常に気持ち良いグルーヴを追求しているのに、同時に緻密さを持ち合わせている人。キャラはいわゆるアメリカンというタイプじゃなく、まったりとしているところもあって、波長があったのはそのせいかも。それに、日本の詫び寂がわかるような感性の持ち主。ゆずの味が良いとか言うんですよ(笑)。だったらお吸い物だね、って話したら、それ飲んでみたい!って。彼なら絶対に味が分かるはず」

ホセ・ジェイムズ・バンド(トランぺッターには黒田卓也がいる)の全面的なバックアップを受け、NYで制作されたこの新作。スタンダードとポップソングのカヴァーが半々という構成で、全体的にシックなアコースティック・サウンドが基調となっている。ホセとコラボするにあたって彼女は、ロマンティックで洗練された世界観に彼の個性であるビターなテイストを加えたものを作りたい、という期待を抱いていた模様。

「彼らのような音楽の歴史の塊といえる人たちと組んでみて、スタンダードやポップスを問わず“型”を明確に提示することの難しさを改めて実感しました。彼らが示す揺れにしたって、こうするのが当たり前なんだっていうのがはっきりしている。で、この人たちが熟知しているアメリカ音楽の型をいま教わらなくてどうするの? という気になったんです」

レコーディング中にヘコんでセントラルパークでボーっとしていたこともあったそうだが、メンバーが出す本物の音に食らいつくようにして紡がれた歌声は、いつになく生々しさに溢れ、魅力的な危うさが浮かぶ。ところでnoonという名には“白”という意味もあるが、10年目の自分自身はどんな色をしていると思う? と訊ねると、「何か透明になっちゃった気分。気持ちはすごくクリア」という返事が。

クリアな美しい光を放つこの“新月”を眺めていると、なるほどと思うのだ。



LIVE INFORMATION


『noon 10th annivarsary tour 〜Full Moon〜』
○1/10(金) 18:30開演/21:30開演 会場:ビルボードライブ大阪
○2/13(木) 19:00開演 会場:STB139スイートベイジル
○2/20(木) 18:30開演/21:15開演 会場:名古屋ブルーノート
http://www.noon-web.net/



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年12月20日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:桑原シロー