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インタビュー

Philippe Jaroussky



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©Marc Ribes



夢のカストラート対決を東京で実現

フランスの若きカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーは、今やヨーロッパではチェチーリア・バルトリ並みの人気を誇るスター歌手である。実際、その正確無比なコロラトゥーラ技巧をはじめ、舞台での存在感や天賦のエンターテインメント精神などの点で共通しているといえよう。またCDの企画でもバルトリ同様、知られざる作曲家の発掘に力を注いできた。

そうしたジャルスキーの最新のソロ・アルバムは、18世紀イタリアの作曲家ニコーラ・ポルポラが当時の名カストラートのファリネッリのために作曲したアリアを収めた魅力あふれる一枚だ。以前発表した『カレスティーニのためのアリア集』に続く、カストラートのアリア集の第2弾でもある。このアルバムにかける思いについてジャルスキーはこう語る。

「ファリネッリは映画『カストラート』で一躍有名になりましたが、実は僕自身は映画で描かれているような、技巧偏重の〈モンスター歌手〉としてのファリネッリ像が苦手でした。そしていわばその反発から、彼の影で忘れられてしまった歌手に光を当てたいと思い、ファリネッリと同時期に活躍したカレスティーニというカストラートのために書かれたアリアのアルバムを2007年に発表したのです。

その後、あるときファリネッリのために書かれたポルポラのオペラと出会い、ようやくこの歌手に親しみをもてるようになりました。ポルポラは著名な声楽教師でもあり、ファリネッリは彼の愛弟子だったので、ポルポラの作品からは弟子に対する深い愛情が感じられるのです。そこでポルポラという視点からファリネッリのアルバムを作りたいと思ったのです。

ポルポラの声楽書法は見事で、美しい旋律を生み出す天才といえます。CDではヴィルトゥオーゾ的な曲ばかりではなく、優しい情愛のこもったアリアも多く選びました。しかも二重唱では憧れのバルトリさんと共演できて感激しました」

3年ぶりとなる4月の来日公演では、ファリネッリ&ポルポラvsカレスティーニ&ヘンデルというテーマで、18世紀ロンドンでの二人のカストラートの対決を一人二役で再現してくれる。

「ヘンデルの傑作オペラ『アリオダンテ』の有名なアリア《Scherza infida》はカレスティーニのために書かれましたが、彼がそれを歌っていた時、別の劇場でファリネッリはポルポラの名曲《Alto giove》を歌っていたわけです。それだけでもロンドンでの作曲家たちの熾烈な争いが想像できることでしょう!」

さてファリネッリとカレスティーニ、どちらに軍配があがるだろうか。



LIVE INFORMATION


『フィリップ・ジャルスキー&ヴェニス・バロック・オーケストラ』
4/25(金)19:00開演
【出演】フィリップ・ジャルスキー(C-T)ヴェニス・バロック・オーケストラ
【会場】東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル
www.operacity.jp/



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年02月28日 10:00

ソース: intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)

interview&text:後藤菜穂子