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第43回――カシーフの世界

冬の口どけ、ソウル・リイシュー

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/03/23   19:00
更新
2010/03/23   19:18
ソース
bounce 318号 (2010年2月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

諸々の都合上、2か月以上も間が空いたわけで、少し前に出たものも多いけど……それでも紹介すべきブツばかりです。まずは今回の連載に合わせて、フォー・トップスの『Something To Remember: The Casablanca Sessions』(Shout!)を推薦。彼らがカサブランカに残した『Tonight』(81年)と『One More Mountain』(82年)をまとめたもので、快活なヒット“When She Was My Girl”を含む前者にはカシーフが鍵盤で参加しています。後者ではホイットニーも後に取り上げる“I Believe In You And Me”が聴けます。

で、カシーフと同時期にブラコン・サウンドの全体像を作り上げた存在、エムトゥーメイの78年作『Kiss This World Goodbye』(Epic/ソニー)が初CD化! まだフュージョンの血とPファンク志向が混在する過渡期の埋もれた名盤で、タワサ・エイジーの可憐な名唱が全開になる“The Closer I Get To You”が聴きモノ。ちなみに〈ムトゥーメ〉ではなく、本人も〈pronaunce em-too-may〉とジャケに書いてる通りでありますよ。

イナタい甘さがお好みなら、ボルティモアから70年代初頭に登場したジミー・ブリスコー&ザ・(リトル・)ビーヴァーズの編集盤『The Flame Still Burns』(Soulscape)をオススメ。少年グループ時代からの成長&性徴とスウィートネスの深まり具合に心を傾けてほしいですね。初出曲もアリ! そして、発掘が続いているオハイオの甘茶系グループ、インペリアル・ワンダーズの未発表曲集『The Motown Years(1981-1984)』(DYOB/MAGNUM CAT)も凄い。これはリーダーのアル・ボイドがモータウンでソングライター活動していた時期に、グループで録っていたモダン・ソウルの宝石たち。ムワ~ッとした音質も手伝って、変態的な甘さに狂いそうです。

で、何の脈絡もなく南へ向かえば、サザン・ソウル屈指のソングライター、ジョージ・ジャクソンのメンフィス録音曲をまとめた『In Memphis 1972-77』(Kent/Ace)が。ハイ産もあったり、とにかく曲の出来の良さがすべてを物語ってますわ。

南部産ではサム&デイヴの最終作となった75年の『Back At 'Cha!』(United Artists/Shout!)にも注目です。元MG's組らの演奏もタイトだし、コンビの掛け合いが発散するシブい熱気は全盛期を過ぎても健在だったんですね。

最後はUKのリヴァプール発、リアル・シングの77年作『4 From 8』(Universal/RPM)を。メアリーJ・ブライジも歌った“Children Of The Ghetto”や、ダフト・パンクのトーマがトゥギャザー名義でネタ使いした“Love's Such A Wonderful Thing”など、ニュー・ソウル風味のまろやかなグルーヴや大ぶりな美メロが最高。良すぎでしょ!

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、フォー・トップス『Something To Remember: The Casablanca Sessions』(Shout!)、エムトゥーメイ『Kiss This World Goodbye』(Epic/ソニー)、ジミー・ブリスコー&ザ・ビーヴァーズ『The Flame Still Burns』(Soulscape)、インペリアル・ワンダーズ『The Motown Years(1981-1984)』(DYOB/MAGNUM CAT)、ジョージ・ジャクソン『In Memphis 1972-77』(Kent/Ace)、サム&デイヴ『Back At 'Cha!』(United Artists/Shout!)、リアル・シング『4 From 8』(Universal/RPM)