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Béla Fleck&The Marcus Roberts Trio 『Across the Imaginary Divide 』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/07/24   11:51
ソース
intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)
テキスト
text : 稲田利之(梅田大阪マルビル店)

ベラ・フレック、今度はピアノ・トリオと共演

1958生まれで、いつのまにか53歳の大ベテランとなってしまったバンジョー奏者のベラ・フレックは、生まれも育ちもニューヨークという都会っ子。バンジョーという楽器にすっかり魅せられ、ボストンに移住して始まった音楽家生活では、ブルーグラスのバンドに在籍しつつも、さまざまな音楽への好奇心は留まるところを知らず、どんどんと広がっていった。

88年に、日本ではフュージョン系の超絶ベーシストとして人気のあるヴィクター・ウッテンと結成した、ベラ・フレック・アンド・ザ・フレックトーンズは現在もなお活動を続けており、それに加え、この10年余りに渡ってフレック自身は、ソロ・アーティストとしても充実作を連発している。2001年の『パーペチュアル・モーション』ではバンジョーをメインにクラシック作品を録音し、見事グラミーも受賞。チック・コリアとの見事なインタープレイを堪能できる07年のデュオ作『エンチャントメント』、そしてアフリカに赴いてのセッションをまとめ上げた09年の力作『Throw Down Your Heart』なども素晴らしかった。

そんなベラ・フレックの新作は、小澤征爾との共演でも知られる盲目のジャズピアニスト、マーカス・ロバーツ・トリオとのコラボ。 90年代にウィントン・マルサリスのバンドでデビューしたマーカス・ロバーツは、他のピアニスト達も憧れるほど、ダイナミクスに富んだピアノの表現力を備え持つ現役でも屈指のジャズ・ピアニストだ。

一聴して、バンジョーとピアノ・トリオという音の組み合わせに、レトロな風合いを感じつつも、一曲一曲が新鮮に聴こえるのは、ビートやグルーヴのバラエティの幅広さ、そしてトリオのアンサンブルの素晴らしさに尽きると言えるだろう。なかでも、マルサリス兄弟の末っ子にして過小評価されているドラマー、ジェイソン・マルサリスのしなやかなビートさばきは、本当に素晴らしい。

近年の多彩な活動に加え、バンジョー奏者ベラ・フレックが、またしても軽々とジャンルの壁を越えてしまった充実の一枚。今年の夏の愛聴盤になりそうです。

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