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二階堂和美『ジブリと私とかぐや姫』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/17   10:00
ソース
intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)
テキスト
text : 桑原シロー


ジブリとあなたの記憶

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『ジブリと私とかぐや姫』と題された二階堂和美の新作は、スタジオジブリ最新作『かぐや姫の物語』から派生したジブリ歌集的アルバムとなった。“的”と書いたのは、従来のスタイルとは毛色が異なるものに仕上がっているから。それにしても、イメージ・ソングに加えて、ジブリ曲カヴァーやさらにセルフ・カヴァーまで入ったものが出来上がるとは。こんなのニカさんにしかできない芸当だよなと思いつつフタを開ければ、“ジブリ/私/かぐや姫”の3要素が全然違和感なく溶け合った内容にまた驚かされて。“私”とは、高畑勲監督がニカさんのことを知るきっかけを生んだ2011年作『にじみ』(デラックス・エディション版が同時リリースになる)のなかの 《めざめの歌》のカヴァーを指す。ふたりの縁を育んだ傑作アルバムの中心的1曲が、新しいいのちを与えられて美しくよみがえっており、ふたたび重要なポジションを与えられていることが感動的だ。聞けばこの表題の命名者は鈴木敏夫プロデューサーだそうだが、ニカさんにセルフ・カヴァーを入れるアイディアを閃かせることになるのだから、やはり彼のプロデュース力は流石だというほかない。

主題歌《いのちの記憶》やオーケストラ・ヴァージョンとなった《めざめの歌》といった強力な癒しパワーを持った楽曲と、奔放な想像力と歌声が駆使されたオリジナリティー溢れる楽曲とのバランスの良さも本作の美点。後者は高畑勲関連作品の主題歌/挿入歌カヴァーに多く、浮遊感満点なミュージックソーの音色をフィーチャーした《君をのせて》を聴いていたら、〈ラピュタ〉っていったいどんな映画だったっけ? と思わず記憶が曖昧になってしまった。バッチリすぎるハマり具合に大笑いさせられた《バケツのおひさんつかまえた”(『じゃリン子チエ』)、『にじみ』の世界に通底していると思わずにはいられなかった《ケ・セラ・セラ》(『ホーホケキョ となりの山田くん』)も良いが、もっ ともグッと来たのは《あしたはどんな日》(『赤毛のアン』)。10月にこの地球を去った三善晃に追悼の意を込めて何度も聴いた。実に素晴らしい歌唱が聴かれる。



CINEMA INFORMATION


映画『かぐや姫の物語』
監督:高畑勲 原作:「竹取物語」
音楽:久石譲 主題歌:二階堂和美「いのちの記憶」
声の出演:朝倉あき/高良健吾/地井武男/宮本信子/他
配給:東宝(2013年 日本)
◎絶賛公開中!
www.http://kaguyahime-monogatari.jp/