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Ry Cooder『1970-1987』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/28   10:00
ソース
intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)
テキスト
text : 五十嵐正


これぞ、グレイト・アメリカン・ミュージック・ボックス!

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『RY COODER 1970-1987』はライ・クーダーがワーナー・ブラザーズに残した(サントラ盤を除く)アルバム11枚の紙ジャケ仕様CDを箱に詰めた非常に廉価のお得なセットだ。

ライは10代後半からスライド・ギターの名人の売れっ子セッションマンとして活躍。70年に『ライ・クーダー・ファースト』を発表した。そのデビュー作、71年の『紫の峡谷』、72年の『流れ者の物語』の初期3作は、戦前のブルーズやオールドタイムなど、白人黒人両方のルーツ音楽を個性的に解釈した曲が大半で、大恐慌期のホーボーや失業者、西部のお尋ね者などが登場する歌を好んで取り上げたのは、ニクソン政権下の米国社会で当時の若者が感じていた疎外感に重ね合わせたのだろう。現在の社会状況で新たな意味を持つ曲も少なくない。

74年の『パラダイス・アンド・ランチ』と76年の『チキン・スキン・ミュージック』では、取り入れる音楽の範囲がさらに広がり、カリプソ、テックスメックス、ハワイのスラックキー・ギター、ゴスペルなどを混合したライにしか作れない唯一無二の魅惑的な音楽を作り上げた。77年のライヴ作『ショー・タイム』はアコーディオンの名手フラーコ・ヒメネスを擁したバンドとの演奏でとても楽しい。78年の『JAZZ』はジャズ誕生 の前夜から最初期までの曲を取り上げ、カリブ海音楽との関係などジャズ史に異なった視線を投げかける作品だ。

79年の『バップ・ドロップ・デラックス』では50~60年代のR&Bを基盤にしたサウンドを聞かせて、また新境地を開拓。80年の『ボーダーライン』、82年の『スライド・エリア』、87年の『ゲット・リズム』では、そこにテックスメックスやゴスペルを添えたライ流ルーツ・ロックを発展させた。『ゲット・リズム』には沖縄の民謡音階を取り入れた曲まである。

80年代以降は『パリ・テキサス』を皮切りに、数々の印象的なスコアを手がける映画音楽家としても有名になった。近作は米社会の現状に物申す政治的な内容のアルバムが続いている。



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